ある休日のこと
今日は王国のみんなのお休みの日です。
畑仕事にお休みはないし、いつも通り畑に行きます。
結構実がなってます。
収穫をして、新しい種を買いに市場へ。
「青カッバっておいしいのかな。買ってみよう。」
食料品店はもうすっかり常連です。
「ルーカスくん、いらっしゃい。今日は王家の蜂蜜なんかどう?」
「蜂蜜かー。クッキーとか作れそうだなー」
そこへ、ローレンシアちゃんが来ました。
「ルーカス君、料理がんばってるんだね!今度私も作ったら渡しに行くね」
「楽しみにしてるよ」
ボワの実も採取して、集めたもので作れる料理を、酒場のお姉さんに聞きに行きます。
「お姉さー……ん?」
見覚えのあるものが落ちています。
これって…
{本当に君はヘタレだな…仕方ない、貰っておいてあげるよ…}
あ…マルチェロ君に押し付けた、小さな装飾品…。
酒場を出ると、マルチェロ君もちょうど出てきました。
「マルチェロ君!これ!」
「あ、あぁ…いや、知らない……悪い」
マルチェロ君は足早に去っていきました。
押し付けてしまったとはいえ、捨てられているのは癪に触ります。
海に捨てようとしましたが、環境破壊はよくないので、その辺に投げ捨てました。
…これじゃあマルチェロ君とやってること同じじゃないか…!
「ルーカス君?どうしたの、顔が怖いよ」
自暴自棄になっていると、ローレンシアちゃんがやって来ました。
「ルーカス君が怒るなんて、よっぽどのことがあったんだね」
さっきあったことを話します。
「そうだったの…せめて捨てずに、誰かにあげれば良かったのにね。マルチェロ君は女子にもモテてたし」
ローレンシアちゃんはとてもよくわかってくれます。
「元気出して。はい、これ、作ってきたの。ルーカス君の腕前には敵わないけど、少しでも気持ちが落ち着けば嬉しいな」
僕にはまだ名前もわからないスープです。
「いい匂いだね。ありがとう」
ローレンシアちゃんは帰って行きました。
帰った途端、さっきの怒りは悲しみに変わります。
釣りに来たホセ・マリアさんも慰めてくれます。
「おっ、いいのが釣れたな…おいおいルーカス、何があったか知らないが、そんなとこでしんみりしてたら、美味い魚も美味くなくなるから元気出せ」
気がつくと辺りはさっきより暗くなっていました。
ホセ・マリアさんも帰り支度を始めます。
「さて、結構釣ったし、帰るかな。ルーカス、そのスープ、冷める前に帰れよ。おやすみ」
すると…
「あら?これ…」
女の人の声が後ろからします。
僕が捨てた小さな装飾品を持っていく女の人がいます。
慌ててその姿を追いかけました。
「あ、あの…!」
「あら、あなたのでしたか?」
「いえ、いいんです!いいんですけど…その…いいんですか…?」
緊張と人見知りで、自分が何を言っているのか自分でもよくわかりません。
「ふふ、おかしな人ね。私には遅生まれの子が1人いてね、その子にあげようかなと思っているのよ」
「あの、あ、ありがとうございます…!」
「こちらこそ、ありがとう」
救われました。
なんだか、とても嬉しい。
マルチェロ君に捨てられたのは悲しいけど、巡り巡って本当に必要な人の元に行くのは、とても嬉しい。
捨てられないといいな。
あの人なら、大丈夫だよね。
夜遅くに気分よく帰って、ローレンシアちゃんにお返しの料理を作ります。
ちょっと作りすぎたけど、まあ、いっか。