口火を切って
こんにちは。
今日来たばっかりの旅の人に会いました。
ドゥイリオ君です。
同じ旅人だったこともあって、すぐ意気投合しました。
「ここの料理…うまいな」
「僕もそう思う。船の中のご飯、パサパサしてるし味気ないもんね」
「そうなんだよな。1年経ってから、また波に揺られながらあの料理を食べるのかと思うと、ゲンナリするよ」
そこでちょっと提案してみました。
「あー…どうかな。来たばっかで全く考えてなかった。もう少しこの国のことを知ってからだな。他にも国はあるし」
「そうだね」
ドゥイリオ君はこの国の前に、他に3つの国を回ってきたそうです。
ローレンシアちゃんとのデートは、初めて僕から当日リードしました。
「えー!初めてじゃない?嬉しいな、どこに連れて行ってくれるの?」
「秘密だよ♪」
初めて誘った僕には少し恥ずかしさもあります。
でも男らしくなってきたことを知らしめるために、酒場のお姉さんに見せびらかしに行くことにしました。
「周りの人にいっぱい見られるね…なんだか恥ずかしいな」
「ご、ごめん…他の場所が良かった…?」
「ううん、ちょっと優越感もあるよ」
そう言ってローレンシアちゃんは、ニッと笑います。
「ルーカス君……私も、そうだよ」
お姉さんがニヤニヤと見つめる中、僕たちは本当に楽しい時間を過ごしました。
ローレンシアちゃんが帰った後、お姉さんがニヤニヤと近づいてきます。
「あんた、やるじゃない」
「お、男らしいところ、お姉さんに見せようと思って…!」
「それでここに連れてきたのね。そんな男前なルーカス君に、お姉さんから、プレゼントよ♡」
手渡されたのは…
「(°_°)(°_°)(°_°)」
「男らしく、プロポーズしてきちゃいなさい」
…お姉さんは、僕の一枚も二枚も上手(うわて)でした…。
「敵わない…」
「さぁ、いってこーい」
お姉さんに背中を押され酒場を出ましたが、僕の向かう先は自分の家です。
何回目かのデートにして初めてやっと僕から誘えたのに…急に結婚だなんてそんなこと…。
急に責任がのしかかってきた気がして、少し憂鬱です。
仕事もない、お金もない、この国に馴染んだわけでもない。
成人してまだ社会経験も浅い僕が、ローレンシアちゃんを守れるかな…。
「まだ先でも…いいよね…」
僕はお姉さんからの依頼の紙を棚に挟み込みました。